月が綺麗ですね

明治時代、夏目漱石さんが英語教師をしていたとき、生徒たちは「I love you」を「我君を愛す」「そなたを愛おしく思う」などと訳しました。それを見た漱石は、「“月が綺麗ですね”とでも訳しておきなさい」と教えたそうです。この逸話の真実性はわかりませんが、とても納得出来る話なのです。

『 I love you 』は二人がしっかり対面し、直接気持ちを伝える印象があります。外国では当たり前の意思表示なのかもしれません。一方日本人は、愛をとても奥ゆかしく表現するのです。愛を語る二人は対面していません。二人とも月を見ています。月がとても綺麗であることを二人が深く共感し、共感し合えるのは二人の心が通じているから。そこに愛を感じ取るのですね。

月は満ち欠けを繰り返しながら、時に思いがない表情を見せてくれながら、時に暗雲に覆い隠されながら、それでもそこに永遠の存在を確信出来るものですね。昔から日本人が月を好むのがよく分かります。

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